3日間の籠城記録

失恋はすごい。

火曜日から、丸3日間引きこもった。

メンタル弱すぎる。驚いた。

 

外にも出ず、ひたすら眠り、Amazonプライムで配信されてたおっさんずラブを全部観て、眠り、母と電話し、泣き、また眠り。

 

昨日は一瞬元気な時があったから、今のうちだと思っていろんなもの捨てた。

茶碗とか歯ブラシとか本人のものはもちろん、

見たら連想しそうなタオルまで犠牲にした。

あと、影響を受けて買ったCDとかも隠した。(さすがに捨てない)

 

で。昨日と打って変わって今日は一日また死んでた。

寝て起きておっさんずラブを観る気力すらなくて、流れるベストヒット歌謡祭をダラダラと視界の端にとらえていた。

 

で、ほんとにこのまま死ぬんじゃないかって、何も動けない自分にイライラしながらスマホいじりまくっていたら、

うっかりマクドナルドのアプリを開いてしまった。

ポテトが、190円だった。

マクドナルドだって、数え切れないくらい一緒に食べた。

だから、やべーもん見たぞと思っていたら、意外とお腹が空いてきた。

悲しみに空腹が勝った。

で、ベッドに張り付いた体をべりべり剥がして着替えた。

何日振りかに、パジャマ以外のものを着た。

寝すぎて背が伸びた気がする。

 

元気だった昨日、やったことがもう一つあった。

買い物リストを作ったのだ。

相手のいろんなものは捨てた。でも、大体が一緒に住んでた時に買ったものだから、ペアなのだ。

色違いの茶碗や箸を使い続けるほどメンタル強くない。

なので、全く新しく全然違うものを買おうと、この機会に買い換えるものリストを作っていたのだ。

 

そんなわけで引きこもり丸3日目の夜、ついに外に出た。

マックの前に、寄りたい場所があった。

 

本当は外に出るのも嫌だった。

別れを告げられて、そのままベッドから起き上がれなくなって部屋にこもっていた。

嘘なんじゃないかって思ったんだ。夢なんじゃないかって。

でも、嘘でも夢でもないじゃん?

外に出て街が普通に動いているのを目にしてしまったら、彼のいない世界を認めなくちゃいけない。

まだ塞がっていない傷を、初冬の冷たい風にさらさないといけない。

それが嫌で、3日間引きこもった。


23時過ぎだったから、人も車も全然いなかった。

音楽を聴きながら…と思ったけど、音楽が聴けない。

どの音楽にも思い出があって、もはや引き金にしかならない。

迷った挙句、唯一(?)共通点のなかったMr.Childrenを聴いた。

 

気づけば11月も下旬に差し掛かるわけで、とても寒い。

とにかく涙もろくなってるのでうっかり泣いてしまわないように、innocent worldを聴いた。

いーつーのー日もーこのー胸にー流ーれーてるーメーロディー

無害でいい。パーフェクトすぎる。

 

で、閉店時間近いドラッグストアに入った。

シャンプーを買いに来たのだ。

匂いは、記憶に直結する。

一緒に選んだシャンプー、ボディソープを使ったら、その瞬間また引き戻される。

何もかも新しくしたかった。

まだあるのにもったいない。お金の無駄遣いだ。

そう思ったけど、これでいいんだ。

これから永久に一緒にいると思っていた人に、永久に続くと思っていた時間を突然強制終了させられたんだ。

わたしは、かわいそうだ。

かわいそうだから、無駄遣いしちゃえ。欲しいもの買っちゃえ。欲しくなくても買っちゃえ。

今は自分の気が済む事を気が済むようにやればいい。

そう思って、買い物リストに載ってて一番手っ取り早く買えそうだったシャンプーを買いに来た。

 

買ったわ。

BOTANIST買ったわ。当時は流行っててなんとなく嫌だったけど、

ドラッグストアにあるシャンプーの中で一番好きな匂いだったから。

高かったーなんでシャンプーだけで1400円もするのーーー

でもいい、気が済んだ。

閉店間際だったのに大きい声で「いらっしゃいませ!」と言ってくれた店員さんの優しさに涙が出そうになった。

そういう時給の発生してる優しさですら、今のわたしには嬉しい。

 

他にボディソープと歯ブラシも買った。

一人で選んだシャンプーに、誰ともお揃いじゃない歯ブラシ。

これでいい。

思い出のかけらが1mmでもあるものは、何一つ目にしたくなかった。

 

あとは目的通りマックに行ってクーポンでポテトを買って、

なんなら目に入って食べたかったものを一通り注文した。我慢しないんだ、今日は。

お会計、590円だった。

いや、安いな。結構頼んだはずだけどな。

1万円札を出したら、お釣りが全て1000円札になってしまいます、と謝られたけど、

そんな事で謝らなくていいんですよお兄さん、と思った。

 

さて、目的を果たした帰り道。

相変わらずミスチル聴いてたんだけど、シャッフル機能で聴いていたので意図せずTomorrow never knowsが流れた。

果てしない闇の向こうに oh oh 手を伸ばそう

誰かの為に生きてみても oh oh Tomorrow never knows

心のまま僕はゆくのさ 誰も知ることのない明日へ

あー桜井さんその歌詞はまずいですねトリガーですよ。

果てしない闇。まさに今。

一瞬で涙腺が緩む。

深夜に目を潤ませながら自転車を漕ぐとか怪しすぎて不審者も寄ってこない。

 

さて、一瞬沸騰した涙腺の熱も冷めて涙も落ち着いた頃、また違う曲。

イントロで緊張した。これは絶対やばい。これ聴いたらだめなやつーーーー

終わりなき旅。

いつも人生の節目、出会いの節目に聴く曲なのだけど、今は流れてほしくなかった…。

恋愛の曲は避けて聴いていたからなんとか平静を保っていたのに、不意に訪れた歌詞に涙腺が決壊した。

閉ざされたドアの向こうに新しい何かが待っていて

きっと きっとって僕を動かしてる

いいことばかりでは無いさ でも次の扉をノックしたい

もっと大きなはずの自分を探す 終わりなき旅

号泣。

深夜の県道でぼろぼろ泣きながら自転車を漕いだ。完全に不審者だった。

桜井さんはわたしのことなどお構いなしにどんどん歌う。

誰と話しても 誰かと過ごしても 寂しさは募るけど

どこかに自分を必要としてる人がいる

憂鬱な恋に胸が痛んで 愛されたいと泣いていたんだろう

心配ないぜ 時は無情な程に 全てを洗い流してくれる

難しく考え出すと 結局全てが嫌になって

そっと そっと 逃げ出したくなるけど

高ければ高い壁の方が 登った時気持ちいいもんな

まだ限界だなんて認めちゃいないさ

泣いた。めちゃくちゃ泣いた。

でも、失恋当日から昨日までの感情とは少し違う気がした。

 

初日から2日間は、ただただ自分の身体の一部になった相手をもがれたことで、痛くて泣いてた。

もう二度と戻らない楽しい時間とか、独占できない表情とか、

今までの時間やこれからの時間が失われた事が悲しくて泣いた。

あと、誰からも愛されなくて必要とされなくなったのが悲しくて泣いた。

どうすれば救われるのか、一生こんな気持ちなんじゃないかって思った。

そんなブレーカーの落ちた自分の心だったけど、やっとのことで聴いた音楽に答えはあった。

 

どこかに自分を必要としてる人はいる。

で、恋に胸が痛んでも、時は無情な程に全てを洗い流す。

そうか。今、この瞬間はそれはもうどん底暗闇マイナス20度の世界だけど、当たり前だよな。

いつか、どこかで、何かの形で救われるのかもしれない。

今どうして自分が悲しいのか、どういう悲しさなのかがなんとなくわかっただけで、

心の中はなんとなく豆電球くらいの明るさを取り戻したような気がする。

 こうやって考察できるようになっただけでも、2日前からだいぶ進歩したように思う。

 

帰ってきてから文章を書きたくなって、夢中で言葉をしたためた。

せっかく買ってきたハンバーガーやポテト、ナゲットをほったらかして。

途中で思い出して食べたけど、途中でまた文章を書いた。

もはやポテトは揚げる前くらいの温度になった。

それでも、頭の中が整理整頓されていくようで、快適だった。

 

大出血した失恋の怪我だけど、ようやく出血がおさまった気がする。

出血がおさまっただけで、カサブタにはなってないからちょっとの衝撃ですぐにまた出血すると思うけど。

まだ悲しい。なんなら、まだ好きだ。

でも、思い出すと胸と胃腸がぎゅうっと掴まれるような嫌な感覚は和らいでいる。

 

本当に人生で一番好きだったのにな。

一生一緒にいると思ってたのにな。

運命が繋がっているならまた出会えるかな。

とか感傷的になるとまた悲しみハードモードになるから、ひとまずこういう振り返りみたいなことはまた今度。

 

引きこもり一日目、母に泣いて電話したら駆けつけてくれて半日一緒にいてくれた。

元気出しなさいと花をくれた。泣いた。泣くでしょ。

その夜、仲良くしている友人二人に失恋報告をした。

情けない、かっこ悪いけど、聞いてほしかった。夜一人でいたら、どうにかなりそうだった。

深夜だったのに二人はずっと話を聞いてくれた。

まとまらない感情をただただ話したけど、共感してくれて、アドバイスをしてくれた。

この人たちがいなかったらわたしは間違いなく死に向かったと思う。

 

そういえば、桜井さんに泣かされながら帰ってたら、左の脇道から車が来た。

危ないな、と思って避けた。

そこではっとした。あ、生きたいじゃんわたし。大丈夫だ、生きたいっぽい。

多分死にたかったら突っ込んでるし、車通り多い場所にフラリと立ち寄ってる気がする。

あんなに死にたかったのに、ひとまず車を危ないと思えるまでに回復してる。

それだけで十分だな。

 

ところで、おっさんずラブにもめちゃくちゃ助けられた。

男性が男性を好きになる話なんだけど、フラれた時のセリフが印象的だった。

ダメなのは、俺が上司だから?それとも…男だから?ねえ!

そうか、男性同士の失恋って、そういう要素も失恋の理由に加わるのか。これはしんどい。

それはさておき、登場人物のまっすぐさに救われた。

こんなにも純粋に人を好きなのに、叶わない恋もあるのだと気付かされた。

頭からっぽにして現実から目を背けられたので、とてもありがたかった。

あと、誰かが失恋している様子になんとなく慰められた。これはめちゃくちゃ性格悪いな。

 

さて。失恋はすごい。

丸3日間引きこもった。

メンタル弱すぎて驚いたけど、きっと必要な時間だったんだ。

そう思おう。

思った以上にダメージ受けたけど、しばらくはかわいそうな人のフリして自分の気が済むようにいろいろやろう。

ひとまず何もかも買い換えてフルリニューアルしたお風呂場でシャワーしよ。